携帯電話の教育的利用に関する実践と評価

 インターネット接続を生かしたモバイル・ラーニング

 1.ねらい

・背景
  IT革命が叫ばれ社会の情報化は急速に進展しているが、一般の教育現場ではインフラの整備は少しずつ進んで来たものの平素における授業実践のレベルで考えると、今だ立ち後れており柔軟性に乏しい状況であることは否めない。具体的にはコンピュータ室での学習環境は整ってきたが、一歩教室の外に出ると途端にその恩恵を受けられなくなってしまうことがあげられる。また、将来的な情報機器の活用についても議論が不足している。つまり、今後、コンピュータの小型携帯化と携帯電話との統合などの将来像を睨んだ実践的研究はあまりおこなわれていない。したがって、現在の状況が21世紀に生きる子供達のために十分な検討や準備を与えているかというと不安が残る。情報システム環境の進化は速いからそれに対応した教育研究がなければ、子供達が学んだ内容は彼等が大人になった頃には既に的外れな、使い道のないものになってしまう恐れがあると考える。
・必要性
 本研究では今後、情報端末として主役となり市民生活に欠かせない情報機器となることが予想される次世代携帯電話に焦点をあてる。この機器は単に会話をするだけでなく、WWW、E-mailなども併せて使用できることに特徴がある。 そして、それに加え動画によるコミュニケーションもできるようになるのである。今まで、フィールドでおこなっていた学習ではコンピュータを持ち込むことやネットワークへの接続も困難だったり、制限があった。したがって、生きた情報をその場で他に伝えたり、加工したりすることは労力を伴ったり、経済的負担が大きかったし、また、場所と時間を選ばずに情報にアクセスしたりコミュニケーションすることは困難だった。しかし、現在、進化し続ける携帯端末はこのいくつかの側面を打破できる能力を有している。これにより、学習の幅が広がったり機会が多くなったりと利便性が高い。また、携帯端末は今後、市民生活に無くてはならないものになることが予想されるから、子供達にとって良い情報リテラシー向上の機会となることが予想できる。
・目 標
 現在、学校教育に導入された総合的な学習では子供達が教室を離れそれぞれが各所でフィールドワークをし情報を収集したり、作業することが多い。この時、これまでは得た情報を教室に戻って加工したり検討したりする事があったが、不具合がおきると、また、フィールドに行かなければならなかった。ここで、携帯端末を用いれば文章はもとより、現場の生の映像や音声なども手軽に送れる。各所に散らばった子供達が相互にコミュニケーションしながら、その都度、計画を再検討したり修正することが可能になるのである。したがって、利便性が高まると共に協調的な学習を展開することが可能になると考える。
 また、これまでは授業時間や場所による束縛があったが、携帯端末の利用によりより柔軟性が高まると考えられる。出先や少しの合間を利用して、思い浮かんだことや得た情報をWWW上の掲示板などに書き込み、皆で共有し再利用することができるのである。例えば、明日の授業の予習について良い調べ方が見つかればそれを書き込むのも良いし、休みの日に出掛けた際に思いがけず見ることができた自然現象や印象的な風景を皆と一緒に分かち合うことができる。 

 
                                                    モバイル・ラーニング コンセプト図
2.概 要 

(1)内容

検証実践

○総合的な学習・教科の学習
・教室外での調べ学習や体験的活動における同期的な音 声によるコミュ ニケーションの手段として携帯電話を使用 する。
・インターネットからの情報収集の手段として使用する。
・インターネットを利用して携帯電話で画像・文字等情報をやり取りす る。
・計算機能などを利用して情報を加工するツールとして使 用する。
・携帯電話上でJavaアプレットを動かし教材として使用する。
・Web上のデータベースにアクセスし情報を共有し非同期 的な協調的な学 習をおこなう。
○学校行事・学級活動
・修学旅行や教室外でのボランティア活動の際に、生徒が自分の位置情 報を取得すると共に教師が生徒の動きを把握する。
・学習者が現在いる場所の周辺の情報を取得するために使用する。
○家庭との連携 
・学校・学級通信の媒体として携帯電話を使用する。
・保護者の質問や考えをすいあげる等、学校との意見交換の手段として使用する。
○地域の教育団体との連携
・各教育施設のiモードバージョンホームページを立ち上げ、携帯電話からのアクセスを可能にし、諸書類の発行、物品の貸 し出しや予約等を手軽におこなえるようにする。

開 発

























































(2)活用例

 本研究において提案された実践は中学校を想定しているが、内容的には小・ 中・校等学校いずれにも適用することができる。 また、今後、総合的な学習に見られるように教科を統合し教室を離れ授業が展開された際に、学習者同士をつなぐコミュニケーションツールとして、また、インターネット活用のツールとして携帯電話は使用される。以下に中学校での活用事例をあげる。
実践例
・題材名 地球の一周の長さを出そう(課題学習)
   学校種    中学校3年生
   教科     数学
   指導計画  2時間扱い
   授業の流れ
千葉、神戸側共、6つの学習班を作り、2地点から1つずつの班がペアになり問題解決に以下のように取り組む。
2校の生徒が自校のグラウンドに立てた棒の影の長さを継時的に測定し、南中の時刻を知る。2点での南中の時刻
の差を携帯端末を用いてコミュニケーションする中で算出をする。その際、他地点での影の長さの状況は、携帯端末
にダウンロードしたJavaアプレットにより、動的に両地点で見ることができるようにする。そして、あらかじめ前時に考え
た地球の周の長さを算出する式にJavaアプレットから値を入力し近似値をその場で求めていく。この時、各班が算出し
た複数の近似値は両地点から自由に見ることができ、それに関し音声で議論し検討することができる。