数学学習でCSCLを行うにあたって
  現場の先生方から、数学の授業でCSCLをやってみたというお話しを聞くことも多くなりました。
  生徒たちが興味を大変持ち、進んで協同学習できた等のお話しもありますが、反面、
  うまくいかなかった。Face to Faceの方に深まりがあった等のご意見もあります。
  そこで、配慮すべき点を何点かあげてみたいと思います。

   ○普段から、討論を受容する雰囲気や授業になっていますか 
     【もし、そうでなかったら、生徒もきっととまどうでしょう。】
   ○生徒達はある程度、コンピュータの操作に慣れていますか
     【Webページを閲覧したり、ワープロを使えるある程度の知識と技能が必要です。】
   ○協同学習を行った相手はどんな人たちですか
     【まったく同じような教室文化、数学学習の文脈上の学習者同士では、発想や考え方、
      方略が似ていて、討論が低調になることがあります。】
   ○何時間ぐらい協同学習を行いましたか
     【生徒たちに学習の効果(情意面以外)が見られるのは、諸外国の研究からいっても長い
      スパンが必要です。1、2時間でうまくいかないのは予想できることです。】
   ○「CSCLのよさ」で取り上げたいくつかの項目が強調された授業を構成できましたか
     【CSCLのよさが生きる場面で行うことが重要です。】

数学に関するCSCLの実例
  現在Web上に見られる数学学習のフォーラムをいくつか紹介します。このようにインターネットの
  持ち味を生かし、授業という枠を越えた使用がこれからは考えられます。   まだ、他にも多数、数学のWeb掲示板はあります。例えば、検索エンジンで「数学 掲示板」など
  とキーワードを入れれば、すぐにヒットします。ご覧になった方は、おそらくテキストベースの掲示
  板で、こんなに数学の学習ができるんだと驚かれたのではないでしょうか。手間はかかりますが
  図などを他のソフトで作り掲示板に貼り付ければ、学習できる数学の領域は更に増えます。

どんなシステムを使うのか
  CSCLに使えそうなシステムにはいろいろありますが、ここでは非同期型のシステムとしてWeb
  掲示板を取り上げます。まず、各種Web掲示板を見ていきましょう(以下は私たちの実践で用い
  たものですが子ども達のプライバシーを守るために画質を落としています。ご容赦ください)


   @時間順内容表示タイプ
     最もシンプルなタイプの掲示板で、時間順にユーザの書き込んだノートが表示されます。
               

   ATreeタイプ
     現在Web上で見られる掲示板の多くがこのタイプです。ノートの内容を直接全て表示す
     るのではなくノートをノードとしてツリー状に表示します。これによりユーザはどのノート
     とどのノートが関係をもっているか知ることができます。多くの場合あるノートへの返信
     という形でノート間が結ばれていきます。
                 

   Bネットワーク(マップ)タイプ
     ノートを表すノードがネットワーク状に表示されます。関係する各ノートはリンクと呼ばれ
     る線分で結ばれます。学習者が関係していると判断したノートとノートをリンクしていくこ
     とができるので、ツリー型と比べノート間の関係性がより十分に可視化されます。オン
     タリオ教育研究所のCSILEや私たちが開発したNakSunはこのタイプの表示を用いてい
     ます。
         

  現在、インターネット上にはAのツリー型掲示板がフリーソフトとして多くおかれおり、ダウン
  ロードして使うことが可能です。実際に授業で使用するにあたっては一番手軽に入手できる
  でしょう。

  ○図や数学的な記号の入力
    数学学習では、ちょっとした図を描いたり数学の記号を書くことが多いわけですが、一般
    的なWeb掲示板はこの作業を不得手としています。画像を貼り付けることができるWeb掲
    示板があるので、それを用いることも考えられますが子ども達に画像ファイルの操作を求
    めるので困難が予想されます。
    最近ではフリーのお絵かき掲示板なるものが登場していますので、それらが多少、役に
    立つかもしれません。
    
授業について
  まず、カリキュラムの中でいつ協同学習を行うかですが、基本的な学習を終えた段階、例えば
  単元末などで発展的な学習として協同学習を行うことが考えられます。また、課題学習の時間
  で行ったり、総合学習の中に位置付けることもできるでしょう。内容に関してはその単元の学習
  で、まだ、あまり理解できていなかったことを討論したり、既に扱った問題を発展的にと捉えいろ
  いろと思考実験などを協同ですることができます。また、新しい課題を始めに提示し、その問題
  解決をWeb上で行うこともできるでしょう。
  我々はこれまで、学校の授業時間内に、複数校間において同学年の生徒同士で協同学習を行
  いましたが、協同学習の形態及び参加者については、様々なものが考えられます。教室外、授
  業時間外そして、異年齢間でも行うことが、もちろん可能です。

  数学の授業で行うCSCLの学習指導案を、
   『中学校新数学科の授業モデル 4 選択教科・総合的な学習編 p.82-p.87 明治図書』
  に執筆しました。参考になれば幸いです。


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数学科教材研究のページ

3.CSCLの実際

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