数学学習でのCSCLの先行研究 
  数学学習でもCSCLを行おうという動きが、近年、見られるようになりました。
   ・守屋(京都教育大)はビデオ会議システムを用いてドイツとの交流学習、
   ・礒田(筑波大)らはWeb掲示板を用いてオーストラリアとの協同学習を行っています。
  これら外国の生徒との協同学習を通しては、コミュニケーションする中で数学の文化の
  違いを互いに発見し、考えを深めていったことが報告されています。
  また、成田(山梨大)は2001年第34回数学教育論文発表会(日数教)で、余田(筑波女子大)ら
  は日本科学教育学会25回年会で、CSCLに関する提案をしています。


CSCLのよさ
  現在、私たちは数学学習におけるCSCLの良さを以下のように考えています。
   1.学習者の主体的な知識構築の場となる。
   2.多数の生徒が学習に参加でき、いろいろな数学的見方・考え方に接することができる。
   3.学習の過程や成果が記録として残り、反省的思考ができる。
   4.数学的な表現の仕方を学ぶことができる。
   5.人前での口頭発表が苦手な学習者の救済になる。

  上記、2と5について、少し説明を加えてみましょう。
  例えば、同じ教室のいつものメンバーでは、その考え方に興味を持つ生徒が他にいないと良いア
  イデアも、重要な疑問も相手にされず自然消滅してしまったり、理解がある箇所で進まない生徒
  にとっては、同じところでひっかかっている生徒がいないとなかなか回りに共感的理解してもらえ
  ず閉塞してしまう事があります(もちろん、教師の支援で救われることがあるのですが)。
  しかし、広いネット上では、同じ境遇の学習者が誰かいて共に学びあうことができるのではないか
  と考えます。特に学校の授業というと同じメンバー(1つのクラス)での1年あるいは2年といった長
  期に渡る教室での学習が一般的ですが、思考スタイルや学習スタイルが、知らず知らずのうちに
  定型化したり、学習者間の固定したある種の力関係や感情的側面が学習にも影響していないで
  しょうか。インターネット上では新たに仲間を発見したり、多くの数学的な見方や考え方に出会う
  中で、そのような問題を多少なりとも解決できるのではないかと考えています。
  ただ、こういった、インターネットの持ち味を生かす方向は重要ですが、なかなか、適当な協同学
  習の相手を探すことが難しいかもしれません。また、誰もが書き込めるオープンな掲示板を利用
  することも考えられますが、その場合はネチケットやインターネットのもつ危険性について、事前
  に十分、指導することが大切であると考えます。

  また、このCSCLのよさについて藤井(東京学芸大学)は次のように言及しています。
   『永井正洋・岡部泰幸ら(32回)は、千葉県内の二つの中学校をつないで、いわば遠隔
    共同学習の場を意図的に設定している。遠隔共同学習の場はコミュニケーションを主体
    とする場であり、コミュニケーションの能力を高める格好の場となるからである。遠隔共
    同学習では生徒は他者の考えを検索したり、その考えに意見を書き込んだりできる。
    このコミュニケーションは教室内でふつう見られる様相と異なり、時間的にずれがある。
    だが、別の視点から見ると、お互いにじっくり相手の考えを考察でき、また自分の考えを
    数学的記号を用いて表現できるという利点がある。数学的な表現が口語ではなく書き言
    葉主体であることを考慮すると、コミュニケーションにおいて「書き込み」の有効性に着眼
    している点は興味深い。』
  (日数教 第34回数学教育論文発表会 「課題別研究部会」発表集録 p.113 )
  中学生に数学を教えていて気付くことの一つに、生徒達が証明や数学的な手続きをなど、論理的
  な事柄を書くことを苦手とするということがありますが、これの一助になるのではないかと考えてい
  ます。


CSCLの課題
  これまでの実践的研究を通して浮かんできたWeb掲示板を用いてのCSCLの課題は以下
  のようです。
   ○構築された知識の有効性や客観性(生徒同士の討論で真の学習となるか)
   ○討論の過程や全体像の把握(Web掲示板システムが討論をうまく表示しているか)
   ○数学的な図や記号の入力
  また、協同学習後の評価をどうするかということも大変重要な課題です。


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2.数学学習とCSCL

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